最終更新日 2022-05-30
香川県、さらには四国でも有数の観光スポットとして知られているのが、「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮(ことひらぐう)。
江戸時代には庶民の憧れだった香川随一のパワースポットで、長~い石段をのぼっての参拝はここならでは。そのほかにも、ノスタルジックな雰囲気漂う門前町でのグルメや温泉など、数々の癒し体験が待っています。
「ちょっぴり日常に疲れたな」と思ったら、こんぴらさんへエネルギーチャージに出かけませんか?
記事の目次
「こんぴらさん(金刀比羅宮)」とは?


「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮は、四国屈指のパワースポット。こんぴらさんの主祭神である大物主神(おおものぬしのかみ)の拠点とされる象頭山(ぞうずさん)に建っており、「神域」という言葉がぴったりのスピリチュアルなムードが漂っています。
それでいて、人を寄せつけないピリリとしたムードはなく、あたり一帯に素朴で親しみやすい雰囲気が漂っているのもこんぴらさんの魅力。五穀豊穰・商売繁盛・航海安全など幅広いご利益があるとされ、国や人々に平安をもたらす神様として、古くから信仰を集めてきました。
江戸時代には「こんぴら参り」が全国に広まり、一生に一度はお参りしたい場所として、庶民の憧れの的になっていたといいます。


こんぴらさんの特徴のひとつが、本殿までに長~い石段があること。門前町からはじまる石段の参道から御本宮(本殿)までは785段、さらにその先にある奥社まではなんと1368段もの石段があります。
これだけの階段をのぼり降りするのは少々大変ですが、だからこそ無事お参りができたときの達成感はひとしお。良いご利益があるように、一段一段願いを込めてのぼっていきましょう。もちろん、こんぴらさん参りの際は、スニーカーなどの歩きやすい靴で出かけてくださいね。
こんぴらさんへのアクセス


象頭山の中腹にあるこんぴらさんですが、門前町へは意外にも公共交通機関で簡単にアクセスできます。高松から琴平へのアクセスは以下の2通り。
① JRを利用する
JR高松駅からJR琴平駅までは快速で約50分(870円)。JR琴平駅から門前町へは徒歩8分程度。
② ことでんを利用する
JR高松駅近くの高松築港駅から琴電琴平駅までは約1時間(600円)。琴電琴平駅から門前町までは徒歩5分程度。
JRのほうが少々運賃は高いですが、所要時間が短い点がメリット。一方、ことでんのを利用する場合は、瓦町など高松中心部の駅からも乗車できるため、高松の繁華街からこんぴらさんに向かう場合はことでんが便利でしょう。
レトロなムードが漂う門前町


JR・琴電の琴平駅で電車を降り、こんぴらさんの門前町に向かって歩き出すと、町全体が昭和のまま時間を止めているかのような感覚に包まれます。


両駅から門前町までは徒歩10分以内。門前町に足を踏み入れると、参道の両脇に土産物屋さんやうどん屋さんなどが軒を連ねるレトロな町並みが広がっており、古き良き時代にタイムスリップしたかのようです。
昔ながらのこんぴら銘菓を扱うお店はもちろんのこと、近年では「おいりソフト」や「こんぴらプリン」など、見た目も可愛いスイーツのお店も増えていて、ただ歩くだけでも楽しい気分になれますよ。
「てんてこ舞」で本場さぬきうどんを味わう


香川といえばやっぱりうどん。ここ琴平でも「うどん県」ぶりは健在で、参道にはいくつものうどん屋さんが並んでいます。
そのひとつ、「てんてこ舞」は、メディアでもたびたび紹介されている「中野うどん学校」の直営店。重厚感あふれる建物は、江戸時代の1850年代に建てられたもので、門前町で最も古い建物なんだそうです。一方、お店のスタイルはあくまでカジュアル。こんぴらさん参りの前後に、セルフ形式で気軽に本場のさぬきうどんを味わうことができます。


基本のメニューは「しょうゆうどん」「ぶっかけうどん」「ざるうどん」など、ザ・王道。うどんの注文口のそばに天ぷらなども用意されているので、お好みでうどんとともに楽しみましょう。筆者は肉うどんと海老天をいただきました。
「てんてこ舞」のうどんだしは、やや甘めですが、てらいがなくいい意味でシンプル。五臓六腑にしみわたるようなやさしい味わいで、毎日食べても飽きがこなさそうです。
「中野うどん学校」ではうどん打ち体験もできるので、本場さぬきの手打ちうどんの作り方を学んでみるのもいいでしょう(予約制)。
こんぴらさん785段チャレンジ


腹ごしらえが済んだら、いよいよこんぴらさん参拝です。こんぴらさんへと続く785段の階段は、門前町の途中からスタート。レトロな商店街のあいだにのびる階段、なんとも風情がありますよね。


のぼりはじめの最初の難所が、勾配が急にきつくなる「一の坂」。113段目には一の坂鳥居があり、その下には狛犬があります。実はこの狛犬、岡山から1844年に奉納された備前焼の狛犬で、重要有形民俗文化財にも指定されています。階段や周囲のお店に気を取られるのか、この狛犬に注目する人は意外と少ないのですが、お見逃しなきよう。


ここから大門までの急階段は運動不足の身体にはなかなかしんどいものがありますが、ところどころに「あと〇段」という石柱があり、なんとなく励まされます。こんぴらさんの石段には、常に自分が何段目を上っているのかがわかる目印もあるので、少しずつ前進していることを確認して自分にエールを送りながらのぼっていきましょう。
大門~旭社


365段目にはこんぴらさんの総門にあたる「大門(おおもん)」があります。二層入母屋造・瓦葺きの構えは迫力満点。ここから先は神域にあたるため、門をくぐるとがらっと雰囲気が変わります。


大門が立派なので、ここで「もうすぐ到着?」という心境になってしまいますが、長~い階段はまだまだこれから。まるで修行のような道のりですが、大門から先は石段周辺も緑豊かになり、清浄な空気感に包まれていることが感じられます。


628段の階段をのぼりきったところにある見事な建物が、「旭社(あさひしゃ)」。はじめてこんぴらさんを訪れるとここが御本宮と勘違いしてしまうかもしれませんが、御本宮はもう少し先。一方通行なので旭社へのお参りは後にして、まずは御本宮を目指します。
旭社~御本宮


旭社から先の道のりは、さらにスピリチュアルなムード漂う世界に。この時点ですでに足が棒のようになっているかもしれませんが、「もうすぐゴール」と思えば頑張る気力もわいてくるというものです。


最後の急な階段をのぼりきると、ようやく御本宮と対面!ここまでくると一気に視界が開けるので、讃岐平野を一望する眺望と「のぼりきった」という達成感があいまって、爽快感でいっぱいになること請け合いです。


こんぴらさんの御本宮は「大化の改新(645年)」以前の創建と伝わる由緒ある建物で、幾度もの改築を経て1878年に現在の姿になりました。派手さはないものの「古色蒼然」という表現がぴったりの趣があり、古くから参拝者を受け入れてきた懐の深さを感じさせます。
ここでしか手に入らない「幸せの黄色いお守り」や、主人に代わってお参りをした「こんぴら狗(いぬ)」にちなんだ「開運こんぴら狗みくじ」など、こんぴらさんらしいお守りやおみくじも要チェックですよ。
「アカボシ珈琲店」でカヌレにトライ


こんぴらさん参拝の後に立ち寄りたいのが、昭和のムード漂う参道周辺で異色の存在感を醸し出す「アカボシ珈琲店」。1段目の脇にあり、長い階段をのぼり降りして疲れた後、ちょっと休憩するのにぴったりのスポットです。
倉庫風の店内はヴィンテージ感たっぷり。店内はほとんどオーナーさんのDIYで仕上げたんだそうです。オープンテラスもあるので、気候のいい時期なら風を感じながら外でドリンクやスイーツを楽しむのもいいですね。


「アカボシ珈琲店」に足を運んだら、ぜひトライしてほしいのが「カヌレ」。カヌレは最近日本でも専門店が増え、人気が急上昇しているフランス・ボルドー地方の郷土菓子です。
お店で焼き上げている「アカボシ珈琲店」のカヌレは、カヌレのテイクアウト目当てのお客さんもいるほどの本格派。外はカリッ、中はしっとり・もっちりとしていて、いくつでも食べられそうです。
アカボシ珈琲店
■住所:香川県仲多度郡琴平町820-1
■アクセス:JR土讃線 琴平駅から徒歩11分
こんぴら詣での後は温泉で癒されて


高松からの日帰りもできるこんぴらさんですが、せっかくなら一泊して温泉も楽しんではいかがでしょうか。意外と知られていませんが、こんぴらさんの周辺にはこんぴら温泉郷が広がっていて、日々参拝客の疲れを癒しているのです。
琴平に温泉が湧出したのは1997年と比較的最近のこと。温泉街としての歴史は浅いものの、観光経済新聞が発表する「日本の温泉100選」の常連で、宿によって「アルカリ単純泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」の3種類の泉質が楽しめるのが特徴です。
「ことひら温泉 御宿 敷島館」


こんぴら温泉郷の宿のなかでも、特に注目なのが2019年9月に開業した「ことひら温泉 御宿 敷島館」。全国にリゾートホテルを展開する共立リゾートが、国の登録有形文化財に指定された老舗旅館「敷島館」を復元してオープンした温泉宿で、唐破風玄関や三階屋根の千鳥破風など、和の情緒漂う壮麗な外観は周囲でもひときわ目を引きます。


「ことひら温泉 御宿 敷島館」があるのは、金刀比羅宮の表参道沿いという絶好のロケーション。JR琴平駅や琴電琴平駅からも徒歩圏内で、こんぴら参りの後に温泉で癒されたり、1泊した後、翌朝早朝からこんぴら詣でに出かけたりと、こんぴらさんを訪れるならまさに理想的な立地といえるでしょう。
予算や人数に合わせて選べる豊富な客室タイプ


堂々たる外観から、敷居が高そうに見える「ことひら温泉 御宿 敷島館」ですが、さまざまなタイプの客室があるため、予算や人数、用途に合わせて利用できるのがうれしいところ。
全部で100室ある「ことひら温泉 御宿 敷島館」の客室タイプは以下の通りです。
・本館和洋室(露天風呂付き):49・55平米
・本館和フォース(桧露天風呂付):49平米
・敷島館和フォース(バス付き):55平米
・本館和ツインDX(シャワー付き):31平米
・本館和トリプルDX(シャワー付き):35平米
・敷島館和トリプル(バス付き):39平米
・本館和ツイン(シャワー付き):24~28平米
・敷島館和ツイン(シャワー付き):24~27平米
・敷島館和ツイン(バス付き):27~29平米
・本館和ダブル(シャワー付き):19~21平米
広さや設備がバラエティに富んでいるのがおわかりいただけるのではないでしょうか。スイートにあたる「本館和洋室」には露天風呂があり、ウッドテラスから最上階ならではの眺めが楽しめます。
一方、最もコンパクトな「本館和ダブル」は、19~21平米のコンパクトなお部屋。温泉宿は1人で泊まると割高になってしまうことが多いですが、「ことひら温泉 御宿 敷島館」の本館和ダブルを選べば、おひとりさまでもリーズナブルに本格的な温泉ステイを満喫することができます。
筆者も実際に、「ことひら温泉 御宿 敷島館」でおひとりさまステイを体験してきました。
1人ステイにちょうどいい「本館和ダブル」


筆者が宿泊したのは、19~21平米の「本館和ダブル」。1人での宿泊や予算を抑えたいカップルにぴったりのお部屋です。約20平米と聞いて「ちょっと狭いかなぁ」と予想していたのですが、実際にお部屋に入ってみると、思っていたほど狭さを感じることはなく、意外にゆったりとしています。


客室内にバスタブがなく、シャワールームのみのため、そのぶんお部屋が広く感じられるようです。和洋室らしく、ベッドやチェアが低めになっているのも圧迫感を感じさせないポイントですね。


2019年9月開業と、オープンしてからまだ日が浅いだけあって、どこもピカピカでキレイ。全体的にリラックス感漂うすっきりとしたしつらえですが、トイレのかわいらしい壁紙や陶器のシンクなど、ポイントとなる部分にこだわりや遊び心が表れています。
コンパクトながらも落ち着ける空間、すっかり気に入りました。
大浴場と4つの貸切風呂で楽しむ温泉


「温泉宿に泊まるからには、お風呂が一番のメインイベント」という人もいるのではないでしょうか。「ことひら温泉 御宿 敷島館」にはお風呂がないお部屋も少なくありませんが、まったく問題なし。大浴場に加えて4つの貸切風呂があるので、館内で湯めぐりが楽しめます。
貸切風呂は、宿泊客であれば予約なし・追加料金なしで、利用時間内に空きがあれば随時入浴できるというシステム。貸切風呂は比較的こぢんまりとしていますが、ほかのお客さんに気兼ねすることなく湯船を独占できるというのは最高ですね。


お湯の温度も高すぎず低すぎずで、ゆっくりと癒しの湯を満喫できます。それぞれ「竹」「檜」「岩」「陶」と違った趣があるので、ぜひ複数の貸切風呂にトライしてみてください。まだ利用者の少ないチェックイン開始直後が狙い目です。
ちなみに、こちらのお宿の温泉は低張性弱アルカリ性冷鉱泉で、神経痛、筋肉痛、関節痛、糖尿病、不眠症などに効果があるとされています。歩き疲れた身体にはうってつけといえるでしょう。
旬の食材を使った会席料理


「ことひら温泉 御宿 敷島館」は、1人でも宿泊しやすい温泉宿でありながら、食事は本格的。夕食は、アワビや黒毛和牛、フグなど香川や瀬戸内の旬の食材をふんだんに使った会席料理がいただけます。食材は時期によって異なるので、そのときのお楽しみに。


会席料理でありながら、ちょっと変わったサービスを取り入れているのもポイント。前菜~先椀替わり~造り~焼き物~台の物というようにコースが展開されていくのですが、「心ばかり~お選びにて」では、5種類ほどのラインナップの中から、好きなものを好きなだけ選ぶことができます。
つまり、お腹いっぱいならひとつも頼まなくてもいいし、食べたければ全種類を頼んでもいいということ。会席料理にもかかわらず、選べる余地があるというのは嬉しいですよね。


お手頃な本館和ダブルの部屋でも、食事は王道の会席料理が楽しめるので、「ことひら温泉 御宿 敷島館」は「宿泊費は抑えつつ、温泉旅館らしい豪華な食事を満喫したい」という人にもぴったりではないでしょうか。
おわりに


香川の観光スポットは公共交通機関では行きにくいところも多いですが、こんぴらは高松から気軽に足を伸ばせるアクセスの良さも魅力。それでいて、昔なつかしい門前町の町並みや、緑に包まれたスピリチャルなこんぴらさんのたたずまいに、日常を忘れてリラックスできます。
四国屈指のパワースポットと温泉&美食を1日で楽しめるのはなんとも贅沢ではないでしょうか。高松から日帰りする人も多いこんぴらさんですが、ぜひ宿泊して温泉と門前町の情緒にじっくりと浸かってみてください。