最終更新日 2022-02-14
京都に行ったことがなくても「清水寺」や「祇園」という地名は1度は必ず聞いたことがあるはず。
清水寺から産寧坂・二寧坂や「ねねの道」を通り、祇園へと至るコースは、京都を代表する超定番観光スポットがひしめき合う欲張りルート。京都初心者さんはもちろん、京都旅行のリピーターも、コース全体を歩いて周ることで点と点がつながり、京都の重層的な魅力が見えてきます。
超定番観光スポットだけでなく、知る人ぞ知る小規模なお寺に参拝したり、祇園で一夜を過ごしたりと、楽しみはさまざま。何度でも歩きたい、清水寺~祇園を踏破する1日モデルコースをご紹介します。
記事の目次
まずは清水寺からスタート


スタートは京都観光のド定番、清水寺から。清水寺とその周辺は京都市内で最も混雑する観光スポットのひとつなので、混雑を避けるには朝早めにスタートしましょう。
修学旅行などで1度は訪れたことがある人も多いと思いますが、大人になって改めて見る清水寺の存在感は格別。特に2008年から続いた「平成の大修理」が終わり、本堂の檜皮屋根が50年ぶりに葺き替えられた今は、「清水の舞台」を最高の形で拝むチャンスなんです。


本堂から張り出した「舞台」の高さは13メートル。舞台上からは、「音羽の滝」やうっそうと茂る木々、その向こうには京都タワーまで見渡せます。清水の舞台の絶好の撮影スポットが、舞台の奥にある奥の院。京都市街と山並みをバックに奥の院から眺める舞台の姿が壮観で、真新しい屋根と周囲の緑のコントラストはまぶしいほどです。


学問成就や恋愛成就、延命長寿のご利益があるといわれるパワースポット「音羽の滝」の前まで下りると、今度は真下から舞台を見上げることができます。
格子状に組まれた木材が支え合う「懸造り」という日本古来の伝統工法が採用されていて、釘は1本も使用されていないというから驚き。先人の知恵に目を見張りますね。
産寧坂・二寧坂をそぞろ歩き


清水の舞台の雄姿を拝んだ後は、産寧坂(さんねいざか)と二寧坂(にねいざか)へ。俗に「三年坂」「二年坂」とも呼ばれるこの坂道は、清水寺周辺でも特にフォトジェニックなエリア。「産寧坂」の名前の由来には諸説ありますが、豊臣秀吉の正妻「ねね」が、子どもを授かることを願ってこの坂をのぼって清水寺に参拝したことにちなんでいるともいわれます。


「産寧坂で転ぶと3年以内に死ぬ」という言い伝えも有名。迷信とはいえ、うっかり転んでしまうと不安になってしまいそうなので、十分注意したいものです。


産寧坂・二寧坂周辺には、清水焼のお店やお香のお店をはじめ、京都らしいお土産が手に入るお店や食べ歩きグルメのお店がずらり。通りがかりで気になったお店をチェックしながら、のんびりとそぞろ歩きを楽しみましょう。コーヒー好き、スタバ好きなら、町家を改装したスターバックス「京都二寧坂ヤサカ茶屋店」も見逃せません。


産寧坂には、この「八坂の塔」がきれいに見えるポイントも。朝の空いている時間を狙えば、タイムスリップしたかのような写真が撮れるかもしれません。
高台寺の美庭を堪能


産寧坂を経て二寧坂を抜けると、「ねねの道」へと至ります。豊臣秀吉の正妻だった「ねね」といえばやはり高台寺。
高台寺は「ねね」が秀吉の菩提を弔うため1606年に創建したお寺。敷地内は思いのほか広く、四季折々の自然を感じる庭園や華麗な蒔絵で彩られた霊廟、ひっそりとした竹林の小径など、見どころが満載です。


高台寺の景観を印象づけているのが、庭園内にある渡り廊下の「臥龍廊(がりょうろう)」。龍の背中に似ていることからその名がつけられたといいます。ぜひ色んな角度から眺めて、躍動的な龍に見えるポイントを探してみてください。


臥龍廊の先にある建物は「観月台(かんげつだい)」。「ねね」が亡き秀吉に思いを馳せながらここから月を眺めたという、切なくも美しいエピソードが残っています。
高台寺は桜や紅葉の名所でもあり、春は方丈の桜、秋は臥龍池の紅葉が人々を魅了してやみません。春・夏・秋の特定期間には夜間拝観も実施されているので、タイミングが合えばしっとりとした夜のライトアップを楽しむのもいいでしょう。
祇園のシンボル「八坂神社」に参拝


古都の花街・祇園のランドマークといえば、鮮やかな朱色の門が目を引く八坂神社。日本全国の八坂神社や素戔嗚尊(すさのをのみこと)を祀る約2300の神社の総本社で、地元では古くから「祇園さん」「八坂さん」の愛称で親しまれています。


本殿に祀られているのは、素戔嗚尊、櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)、八柱御子神(やはしらのみこがみ)の三柱の神さま。無病息災や厄除けなどのご利益があるといわれています。2020年に国宝に指定された本殿は、1654年に徳川家綱によって再建されたもの。日本最大級の神社神殿といわれ、「祇園造」と呼ばれる、本殿と拝殿がひとつの屋根でつながった八坂神社特有の構造に注目です。


ほかにも、八坂神社境内には数々の摂社や末社があります。特に女性必見なのが美の神さまを祀る「美御前(うつくしごぜん)社」。鳥居のそばには2~3滴を肌につけると美のご利益があるという「美容水」が流れていて、舞妓さんや芸子さん、美容業界関係者の参拝が絶えません。あなたも身も心もより美しくなれるよう、祈願してみては?
「味味香」で京風カレーうどんを食す


八坂神社前の通りにたたずむ小さなお店が、「京のカレーうどん 味味香 祇園店」。京都木屋町の屋台に始まり、1969年から半世紀以上にわたって愛されてきたカレーうどんの名店です。
京都でカレーうどんだなんて意外な感じがするかもしれませんが、京都は「だし」の文化。だしにこだわったカレーうどんがおいしいのは言わずもがなですよね。


「味味香」のカレーうどんは、昆布とかつおぶしの旨味を最大限に引き出した旨味だしに合わせて、11種類の厳選されたスパイスを独自にブレンドし、片栗粉で「あんかけ」に仕上げたもの。カレールウや動物性の油脂は一切使っていない「京のカレーうどん」です。
麺も国産の小麦粉を使い、カレーあんに合うように店主自らが改良を重ねたオリジナル。2015年、「味味香」の「京のカレーうどん」は、カレーうどんとしては唯一、「The Wonder500」(日本が誇るべきすぐれた地方産品)に認定されました。


そんな「味味香」のカレーうどんは、辛さのなかにも優しい甘さと奥行きのある旨味があり、1度食べると病みつきになってしまう味わい。麺の太さやカレー風味の濃さが選べるだけでなく、卓上のスパイスで自分好みにカスタマイズできるのも嬉しい配慮です。
青蓮院門跡でロックな襖絵を堪能


名だたる名所旧跡がひしめき合う祇園周辺でも特にフォトジェニックなお寺が、青蓮院門跡(しょうれんいんもんぜき)。平安時代に最澄が比叡山延暦寺に造った僧坊「青蓮坊」に端を発し、代々皇族や貴族が住職を担ってきた由緒ある寺院です。
そんな青蓮院門跡を特徴づけているのが、「平成の琳派」とも称される壁画絵師、「Ki-Yan」こと木村英輝氏が手がけたロックな襖絵。2005年、Ki-Yanは青蓮院門跡の華頂殿に、これまでなかったような大胆な襖絵を描いたのです。


「極楽浄土」「生命賛歌」「青の幻想」の3つのパートからなる襖絵「LOTUS」は、仏教に欠かせないハスの花がある世界を表現したもの。


真っ青なハスと黄色や赤のつぼみのコントラストが鮮烈な「極楽浄土」、カエルやカニ、カメといった生き物たちが、ハスの花の周囲でユーモラスに躍動する「生命賛歌」、幽玄の世界を感じさせる「青の幻想」と、それぞれ異なる趣の襖絵が繰り広げる幻想世界は、いつまでも見ていたくなるほど。写真好きなら、シャッターが止まらなくなってしまうこと請け合いです。
「ぎおん徳屋」で絶品わらびもちを満喫


京都といえば、厳選された素材を使った上質な和スイーツも欠かせません。さまざまな甘味処が点在する祇園周辺でも特に知られたお店のひとつが、花見小路にある「ぎおん徳屋」。ぷるぷるのわらびもちが好きな人は、ぜひ1度訪れてほしい名店です。


徳屋こだわりの「本わらびもち」は、国産本わらび粉と和三盆を丹念に練りあげてつくった、とろけるような舌触りが特徴。お箸で持ち上げた瞬間、「ぷるっ」「とろん」としたあまりの柔らかさに驚くはず。


お好みで黒蜜ときな粉をかけて、上品な甘さとぷるぷるとろ~りの食感を心ゆくまで堪能しましょう。わらびもちを完食したら、中央の氷も黒蜜やきな粉と一緒に食べてよし。シンプルだからこそ、素材のおいしさが際立ちます。
わらびもちが食べられるお店はたくさんありますが、生産量が少ない希少なわらび粉を使った本わらびもちが食べられるお店は限られます。そのぶん、本わらびもちは少々お高めですが、1度体験するとサツマイモでんぷんからつくった“わらびもち”には戻れないかも…。徳屋の本わらびもちは日によっては売り切れてしまうこともあるので、早めの時間に訪れるのがおすすめです。
京都最古の禅寺「建仁寺」で「双龍図」を鑑賞


花見小路からほど近いところにある建仁寺(けんにんじ)は、京都最古の禅寺。日本に初めて臨済宗を伝えた栄西が1202年に開いた、臨済宗建仁寺派の大本山です。
枯山水の庭園や、創建800年を記念して描かれた「双龍図」「風神雷神図(複製)」、アーティスティックな襖絵など、撮影可能な見どころが盛りだくさんで、写真好きも大満足間違いなしです。


本坊に足を踏み入れると、国宝の「風神雷神図」がお目見え。複製とはいえ、細部まで精巧に再現されており、風神と雷神の躍動感とどこかユーモラスな表情が印象的です。


重要文化財に指定されている方丈の前庭「大雄苑(だいおうえん)」は、心安らぐ枯山水庭園。縁側に座って、自然の風を感じながら庭園を眺めるだけで、ゆったりとした穏やかな気持ちになれます。


染色作家の鳥羽美花さんによる、モダンでアーティスティックな襖絵「舟出」にも注目。目の覚めるような鮮烈なブルーが基調でありながら、不思議と静謐さを感じる幽玄の世界に引き込まれます。


本坊の見学が終わったら、次は法堂へ。ここには天井いっぱいに2体の龍が描かれた「双龍図」が見もの。この「双龍図」は、建仁寺の創建800年を記念して、2002年に日本画家の小泉淳作氏が2年をかけて描いた大作です。108畳分もの画面いっぱいに躍動する阿吽の龍は息を呑むほどの迫力。
龍の絵といえば妙心寺の「雲龍図」も有名ですが、建仁寺の「双龍図」は妙心寺と違い写真撮影がOKなのが嬉しいですね。
「セレスティン京都祇園」にチェックイン


京都旅行といえば、市内きっての繁華街・四条河原町周辺や、移動に便利な京都駅周辺に宿をとる人が多いのではないでしょうか。祇園の街並みを夜まで堪能したいなら、「祇園に泊まる」という選択肢もあります。
「せっかくならホテルにもこだわりたい」という人のために、祇園でワンランク上の滞在を叶えてくれるのが、「ホテル ザ セレスティン京都祇園」。2017年9月に開業した三井不動産グループの「セレスティン」ブランド第1号店です。


コンセプトは「東山悠遠(ひがしやまゆうえん)の邸」。京都の伝統にモダンなエッセンスを加えた、滞在そのものが旅の目的となるような「デスティネーション型ホテル」を目指しています。祇園商店街や花見小路にも至近ながら、やや奥まったところにあるため、大通りの喧噪を忘れる閑静な環境。館内に一歩足を踏み入れると、そこからふっと空気が変わったかのような静寂と安らぎに包まれます。


祇園という世界有数の観光地にありながら、吹き抜けのロビーや客室に囲まれた中庭など、ゆったりとした空間づかいがなんとも贅沢。


全157室の客室は洗練されたモダンな和空間。最も手頃な「モデレートクイーン」でも25.7平米の広さがあり、ゆっくりと旅の疲れを癒すことができます。「スーペリアクイーン」なら28.2平米〜31.7平米、「スーペリアツイン」なら30.0平米〜34.7平米と、さらにゆとりのある空間に(写真はスーペリアクイーン)。


清水焼の茶器や、フランス発祥の茶道をテーマにした「THEMAE」のシャンプー・ボディソープ類など、備品やアメニティも上質感を感じられるものばかり。客室のバスルームに加え、坪庭を望む大浴場もあり、和の雰囲気に身を浸して心と身体を癒せます。
JR京都駅八条口とホテルを結ぶ無料シャトルバスもあり、至れり尽くせり。隠れ家のような雰囲気と、心のこもったおもてなしで、ちょっぴり優雅な祇園ステイを叶えてくれます。
■住所:京都市東山区八坂通東大路西入る小松町572
■アクセス:京阪祇園四条駅より徒歩10分
■新型コロナウイルス対策情報:https://corp.gardenhotels.co.jp/hygiene/
夜の花見小路をお散歩


祇園商店街から延びる花見小路は「京都で最も雅な通り」といっても過言ではない場所。甘味処やお茶屋、スイーツショップなどが軒を連ね日中はとても賑やかですが、夜になると人通りが少なくなり、雰囲気が一変します。日中花見小路を散策して、夜にまた改めて来る人はなかなかいませんが、祇園に泊まれば「夜の花見小路散歩」だって気軽にできるというもの。


観光客の姿が消え、提灯にあかりの灯った夜の花見小路は花街らしいしっとりとした情緒たっぷり。時間帯によっては本物の舞妓さんにも会えるかもしれません。
「Rigoletto Smoke Grill & Bar」で町家ディナー


祇園というと「お茶屋さん」のイメージがあって、ちょっと敷居が高いイメージを抱いている人もいるかもしれません。確かに、祇園には一見さんの観光客には入りにくいお店が多いですが、京都らしさを感じつつ誰でも気軽に入れるお店もあるんです。


それが、花見小路の奥にある「RIGOLETTO SMOKE GRILL AND BAR」。茶屋作りの一軒家で一見すると高級店のようにも見えますが、実はカジュアルに京都ならではのスパニッシュイタリアンが楽しめるお店なんです。格子戸を開けると、店内はモダンな活気のある空間。カウンター席もあるのがおひとりさまには嬉しいところ。
店名にもある通り「スモーク」がテーマの「RIGOLETTO SMOKE GRILL AND BAR」。ディナーメニューは、ピザやパスタ、お肉のグリルをはじめ多種多様。「自家製スモークポテトサラダ」や「燻製きのこのアヒージョ」など、330~660円のタパス(小皿料理)も充実しており、少人数でもさまざまな料理が味わえます。


「自家製ベーコンのシーザーサラダ」(写真はSサイズ)は、茎の残るシャキシャキのレタスをその場で切っていただくユニークなスタイル。旨味たっぷりの自家製ベーコンがポイントで、ベーコンのスモーキーな風味とフレッシュなレタスのコラボレーションがたまりません。


生ハムと玉ねぎを使ったサクサクのスペイン風コロッケ「クロケッタス」はデリバリーでも人気のメニュー。クリーミーなタネと甘酸っぱいトマトソースがベストマッチです。お酒やモクテルなどドリンクの種類も豊富なので、色々と目移りしてしまうはず。


朝清水寺からスタートし、祇園で夜を過ごせば、たった1日で大充実の京都観光に。
京都旅初心者の方はもちろん、リピーターの方も、線でつないで京都のハイライトを周ることで、もっと京都が好きになることでしょう。