最終更新日 2022-08-25
「1度は行ってみたい美術館」として、その名を全国にとどろかせているのが、徳島県鳴門市にある「大塚国際美術館」。日本最大級の常設展示スペースには、1000点以上の西洋名画が原寸大陶板に再現されており、美術史に残る名画の数々を一度に堪能することができるのです。
大塚国際美術館を訪ねた後は、鳴門を代表するリゾートホテル「アオアヲナルトリゾート」に滞在してはいかがでしょう。ここだけの「ゴッホのヒマワリルーム」に泊まれば、アート鑑賞の余韻を感じながら、ゴッホの「ヒマワリ」の世界観にどっぷりと浸れます。
記事の目次
世界の名画に出会える「大塚国際美術館」


徳島県鳴門市、瀬戸内海国立公園内にたたずむ「大塚国際美術館」は、日本最大級の常設展示スペースを誇る美術館。
古代の壁画から、世界26ヵ国・190以上の美術館が所蔵する現代絵画に至るまで、1000点以上の西洋名画が原寸大陶板に表現されており、「1度は行ってみたい美術館」として注目を集めています。2018年には、徳島県出身のシンガーソングライター・米津玄師さんが、大塚国際美術館から生中継で紅白歌合戦に出演したことでも話題になりました。


約4kmにもおよぶ鑑賞ルートには、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」や、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、ゴッホの「ヒマワリ」、ピカソの「ゲルニカ」など、美術史上に名を残すそうそうたる名画が勢ぞろい。


これらの原画は各国のさまざまな美術館に散らばっているため、通常1ヵ所で観ることは叶いませんが、ここなら誰もが知っているような世界の名画の数々を1度に楽しむことができるのです。その意味で、大塚国際美術館は世界のアートファンにとって夢のような場所だといえるでしょう。
職人技で色や質感も見事に再現


あまり聞き慣れない「陶板」とは、文字通り陶器の板のことで、館内には大塚グループの1社である大塚オーミ陶業の特殊技術によって、オリジナルと同じサイズに再現した名画の数々が展示されています。大塚国際美術館は日本最大級の常設展示スペースを誇る美術館であると同時に、世界初の陶板名画美術館でもあるのです。


そこに並んでいるのは単なる「複製画」ではなく、「アートへの敬意と情熱」が形になったもの。熟練の職人が何度もレタッチや焼成を繰り返しながら調整を加えていくことで、原画の色はもちろんのこと、油絵の具の盛り上がりまでもが緻密に再現されているのです。
「陶器の板でここまで再現できるの!?」という驚きと感動もまた、大塚国際美術館の見どころです。
1日じゃ足りないほどの圧倒的なスケール感


日本最大級の常設展示スペースを誇るだけに、大塚国際美術館はひとつひとつじっくり観ていたら、とても1日では周りきれない圧巻のスケール。全長4kmの鑑賞ルートをただ歩くだけで1時間ほどかかるといわれています。
フロア構成は、B3、B2、B1、1F、2Fの計5つ。長いエスカレーターをのぼった後にたどり着くのが地下3階なので混乱しますが、大塚国際美術館は瀬戸内海国立公園内に位置しているため、半分以上が山中に埋まっているという、建築自体も珍しいものなのです。


古代や中世の作品を展示するB3からスタートし、現代の作品を展示する2階まで順に上がっていけば、西洋美術史の変遷が肌で感じられます。美術のことはよくわからないという人も、年代順に見ていくことで「バロック時代は光と影のコントラストが印象的な絵画が多いな」など、時代ごとの特徴を感じ取ることができるでしょう。


筆者はランチ休憩含め5時間ほど滞在しましたが、それでも駆け足になってしまう展示室があったほど。大塚国際美術館の魅力を存分に楽しむには最低でも3時間ほど滞在したいところですが、滞在時間が限られてしまう人のために、所要約1時間20分のモデルコースも用意されています。
モデルコースは館内に設置されている「マップ&ガイド」に掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。
臨場感たっぷりの「環境展示」


陶板で世界の名画1000点以上が再現されているという時点で類を見ない大塚国際美術館。展示方法もユニークで、以下の3つの展示スタイルに分けられます。
・環境展示
古代遺跡や礼拝堂などの壁画を空間ごと再現した立体展示
・系統展示
古代から現代までの西洋美術の変遷を美術史的に学べる展示(古代~中世~ルネサンス~バロック~近代~現代)
・テーマ展示
テーマごとに時代を超えたさまざまな画家の作品を展示することで、表現方法の違いを比較できる展示(「時」「生と死」「食卓の情景」「家族」「レンブラントの自画像」など)
とりわけその作品がある場所にワープしたかのような気分が味わえる「環境展示」は、大塚国際美術館ならではの臨場感あふれる展示手法といえるでしょう。ここで、環境展示の一部をご紹介します。
・スクロヴェーニ礼拝堂(B3)


2021年に世界遺産に登録された、イタリアの「パドヴァの14世紀フレスコ作品群」のひとつに数えられるのが、スクロヴェーニ礼拝堂。ジョットが礼拝堂内に描いた壁画が立体的に再現されており、天井の幻想的なブルーと静謐な空気感にはっとさせられます。
・モネの「大睡蓮」(B2)


200点以上の睡蓮の絵を生み出したモネは、「睡蓮」を自然光のもとで観てほしいと願っていたそう。とはいえ、油絵の原画を直射日光にさらすことはできません。陶板画を扱う大塚国際美術館だからこそ、自然光が降り注ぐ屋外に「睡蓮」を展示することができたのです。
・システィーナ・ホール(B3)
大塚国際美術館といえば、バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画と正面壁画「最後の審判」を再現した「システィーナ・ホール」も忘れてはなりません。ほの暗い空間に天井画と壁画が浮かび上がる神秘的な光景に思わず息を呑みます。「システィーナ・ホール」は、ここでの写真つきでの紹介ができないため、ぜひご自身の目でその美しさを確かめてみてください。
ちなみに、筆者はバチカンのシスティーナ礼拝堂も訪れたことがありますが、混雑のため、立ち止まって天井画や壁画を眺めることは許されませんでした。立ち止まって作品の細部までじっくり眺めることができるのも、大塚国際美術館ならではの魅力といえるのではないでしょうか。
大塚国際美術館だから実現した奇跡の展示
世界の名画が1000点以上展示されているだけに、どれも甲乙つけがたく、見どころを挙げればキリがありませんが、陶板名画美術館だからこそ実現した展示には特に注目したいものです。
オリジナルでは決して実現できない、奇跡のコラボレージョンをとくとご覧ください。
・エル・グレコの祭壇衝立復元(B3)


この作品、大塚国際美術館では6枚の絵画からなる祭壇衝立となっていますが、実際には19世紀初頭の戦禍により破壊され、散逸してしまいました。
スペイン・マドリードのプラド美術館にある5点の作品と、ルーマニア国立美術館にある1点から、大祭壇衝立画を原寸大で推定復元したもので、ほかでは見られない展示となっています。
・修復前後の「最後の晩餐」(B2)


大塚国際美術館で最大の見どころのひとつとなっているのが、イタリア・ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院に描かれている「最後の晩餐」。かのレオナルド・ダ・ヴィンチの代表作として、あまりにも有名ですね。


「大塚国際美術館ならでは」のポイントが、修復前と修復後の両方が原寸大で再現されていること。本家のサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院では、1999年に20年におよぶ修復作業が完了し、現在は修復後の姿が見られるようになっていますが、当然、修復前の様子は見ることができません。ところが、大塚国際美術館では修復前と修復後を比較鑑賞できるため、修復によって作品がどのように変化したのかが手に取るようにわかるのです。
・ゴッホの7つの「ヒマワリ」(B1)


世界の名画が集う大塚国際美術館のなかでも、一番の人気を誇っているのがゴッホの「ヒマワリ」。実はゴッホが描いた花瓶の「ヒマワリ」は全部で7作品あり、描かれた時期によって色彩などが異なります。
7つの「ヒマワリ」のなかには焼失してしまった作品があることに加え、現存している作品もアメリカ、ドイツ、イギリスなどに散逸していて、すべてを一度に見ることは不可能。しかし大塚国際美術館なら、「ゴッホの7つのヒマワリを一度に見る」という夢が叶うのです。7つの「ヒマワリ」を見比べることで、ゴッホの心境の変化を感じることができるのではないでしょうか。
アートにちなんだグルメも


大塚国際美術館には、アート鑑賞の合間に立ち寄れるカフェやレストランも備わっています。B2にある「カフェ・ド・ジヴェルニー」は、モネの池を望むカフェ&レストラン。
徳島の食材を使ったメニューや、アート作品にインスパイアされたメニューが揃っており、ひと休みしているあいだもアートを身近に感じられます。


ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」にちなんだ「ヴィーナスカレー」。ホタテをかたどったお皿がユニークですが、たっぷりの野菜が食べごたえのある一品です。


ランチだけでなく、ティータイムにも利用でき、ドガの「舞台の踊り子(エトワール)」をイメージしたケーキ「ブラックスワン」など、見た目も可愛いスイーツとともに、午後のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
それぞれの楽しみ方を見つけて


今回、実際に大塚国際美術館を訪れてみてわかったのが、「ほかにはない展示が見られる美術館」であることに加え、「訪れた人それぞれの楽しみが見つかる美術館」だということです。
古代から現代までのアートを年代順に鑑賞していけば、時代ごとの特徴や西洋美術の変遷・発展がよくわかりますし、美術の教科書に載っているような世界的名作をピックアップして観ていくのもいいでしょう。


「オリジナルにはかなわない」という意見もあるかもしれませんが、大塚国際美術館では、原画ではできない画期的な展示を楽しむことができます。また、有名な作品をひと通り観て、特に心が動いた作品があれば「いつかこの絵の原画を本場の美術館に観に行こう」と思うきっかけにもなるでしょう。


大塚国際美術館に展示されている作品のすべてを本家の美術館で観ようと思うと、とんでもない時間と労力がかかります。
ところが、世界の名画が集う大塚国際美術館なら、自分の好きな作品をヨーロッパ中から見つけることも簡単。ぜひ、自分なりの楽しみ方を見出してください。
大塚国際美術館へのアクセス


大塚国際美術館は、JR鳴門駅から「鳴門公園」行きの路線バスで約15分。「大塚国際美術館前」で下車しましょう。
京都・大阪・神戸から便利な直通高速バスも出ており、乗り換えなしで大塚国際美術館まで行くことができます。そのほかの地域からも、バスツアーなどが出ているので、「ラクに行きたい」という人はツアー利用を検討してもいいでしょう。
鳴門を代表するホテル「アオアヲナルトリゾート」


大塚国際美術館へは、神戸や大阪などから日帰りで訪れる人も多いですが、せっかく風光明媚な瀬戸内海国立公園にやってきたなら、1泊してさらなる非日常を体験してはいかがでしょうか。
大塚国際美術館を訪れた後の宿泊先としておすすめなのが、南欧風リゾートホテル「アオアヲナルトリゾート(旧称:ルネッサンス リゾート ナルト)」。1991年に「マジィ リゾート ナルト」として開業後、「ルネッサンス リゾート ナルト」に改称。さらに2019年に「アオアヲナルトリゾート」にリブランドして現在に至っています。


5つのカフェ・レストランに4つの温泉浴場、ガーデンプール、テニスコートといった充実の設備や豊富なアクティビティで、鳴門を代表するリゾートホテルとしての存在感を確固たるものにしてきました。
アオアヲナルトリゾートへのアクセスは、JR鳴門駅からホテルの無料送迎バスで約15分。大阪・神戸方面から乗り換えなしでアクセルできる直通高速バスも運行しているほか、路線バスも利用できます。
大塚国際美術館からは路線バスで約2分。約1.4kmなので歩けない距離ではありませんが、荷物のことも考えると、事前に時刻表を確認しておいてバスで行くのがおすすめです。
ゴッホのヒマワリルームで過ごす特別な時間


アオアヲナルトリゾートの208室の客室はすべてがオーシャンビュー。ニーズに合わせて選べるさまざまなお部屋がありますが、大塚国際美術館鑑賞後の滞在にぴったりなのが「ゴッホのヒマワリルーム」です。
2018年に新しく設けられた「ゴッホのヒマワリルーム」は、その名の通りゴッホの「ヒマワリ」の世界観に浸れるお部屋。もちろん原画ではありませんが、ここに泊まればゴッホの「ヒマワリ」を独り占めできてしまうのです。


インテリアは、ゴッホが過ごしたフランス・プロヴァンス地方のアルルをイメージしているそう。37平米の広々とした空間が、ナチュラルなあたたかみを感じさせる色調でまとめられており、ゆったりとくつろげます。


壁紙やマグカップもヒマワリなら、ヒマワリのハーブティーやヒマワリのアロマオイルまで用意されていて、まさにヒマワリづくし。陽だまりを思わせるアロマの香りに包まれて、非日常のひとときが楽しめます。


バスアメニティはフランス・プロヴァンスのライフスタイルを取り入れた「ロクシタン」のもの。こんなところにも、晩年をプロヴァンス地方で過ごしたゴッホとのつながりが垣間見えますね。


窓の向こうには、海を眺められるバルコニーも備わっています。気候の良い時期には、お部屋に備わっているゴッホに関連する書籍を片手に、ヒマワリのハーブティーを楽しむのもいいでしょう。
「ヒマワリ」の絵とアルルをモチーフにしたインテリアに囲まれているせいか、瀬戸内との自然との距離がひときわ近く感じられます。


翌朝目が覚めたとき、窓の外を見ると朝焼けの真っ最中。赤らんだ空が海に映る様子はなんとも幻想的で、最高の形で1日のスタートを切ることができました。


「ゴッホのヒマワリルーム」は、まさにアートと瀬戸内の自然に親しめる空間。「ヒマワリ」の絵は部屋ごとに異なり、どの「ヒマワリ」に当たるかというのも楽しみのひとつです。「ゴッホのヒマワリルーム」は5室しかないので、宿泊するなら早めのご予約をどうぞ。
おわりに


これまで、ルーヴル美術館やウフィツィ美術館をはじめ、国内外の美術館を訪れてきた筆者ですが、大塚国際美術館で過ごした時間はまったく新しいアート体験でした。アートファンはもちろんのこと、そうでなくても美術史を代表する名画の数々にふれることで、自分なりのアートの楽しみ方を見つけることができるでしょう。
大塚国際美術館を訪問した後、アオアヲナルトリゾートに滞在すれば、アートと瀬戸内の自然がぐっと身近に感じられますよ。