最終更新日 2021-10-28
菅首相が言及したことにより、多くの国民から注目を集めている「ワーケーション」。
ではワーケーションとは一体どのようなものなのでしょうか。
また、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
本記事では、企業の事例をもとにワーケーションについてメリットやデメリットなどを解説していきたいと思います。
記事の目次
ワーケーションとは?


ワーケーションとは、英語の「ワーク(work)」と「バケーション(vacation)」の二語を組み合わせて造られた造語です。
働くという意味を持つワーク、休暇という意味を持つバケーション。
この二語を合わせた造語ですので、大方予想はつくかもしれませんが、
ワーケーションとは、「休暇をとりながら好きな時間に働く」という新しい働き方を意味する言葉です。
2020年、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業が在宅勤務などのリモートワークなど「オフィスに出社しない働き方」を導入することを余儀なくされました。
オフィスワーカーだった方にとって、家で仕事をするのは、最初はかなり革新的で快適に思えたかと思います。
満員電車などの移動時間も省くことができますし、時間を有効に活用しやすくなりました。


しかし、いつ終わるかわからない新型コロナウイルスの感染状況を前に、少しずつ疲れが見えてきたようにも感じます。
オフィスに行かない、移動をしないことで運動不足や気分転換などがしづらくなり、精神的に滅入ってしまう方もいます。
また、観光業に関しても、近年はインバウンド(訪日観光客)の恩恵も大きかったため、大きな打撃を受けています。
この二つの状況を踏まえた上で、菅首相はワーケーションという働き方に力を入れていきたいと語っています。
そして実際、政府は大きくワーケーションの支援に踏み出しているのです。
例えば、観光庁はワーケーション・ブレジャー(Business × Leisure)の普及、そしてそれに伴う観光需要の促進を図るため、新たに委員会を組織し、取り組みを進めています。
また、環境省では国立・国定公園および国民保養温泉地における誘客やワーケーションの推進を図るため、補助金などを用いて地域経済を支援しています。
総務省では、首都圏の企業等とともにワーケーションを取り入れたプログラムで地方創生研修を行なっています。
後ほど触れますが、和歌山県をはじめとした地方自治体などがワーケーション推進に取り組んでいることも挙げられます。
企業における事例


コロナウイルスとは全く関係のない2017年、実は有名企業であるJALは働き方改革の一つとしてすでにワーケーションを導入していました。
はじめは、「休暇期間中のテレワークでの業務を認める」というものでした。
そうすることによって、
「長期休暇取得の際に急な会議が入ってもその休暇の日程を変更する必要もなく、また会社が協賛する地域でのイベントへの参加も可能になった」とJALは述べています。
はじめは有給休暇の取得を促す取り組みでもあったのですが、従業員が家族と過ごすことのできる時間が増え、従業員がより充実したライフスタイルを確立することで、会社へのエンゲージメントも高めることができました。
三菱地所もワーケーションを推進しており、三菱地所のH Pでは企業の事例が紹介されています。
株式会社ギックスでは、このようなスケジュールでワーケーションを実施したそうです。
7:40 羽田空港出発。
8:15 南紀白浜到着。
9:15 オフィスで仕事開始。
11:45 ランチで現地のグルメを楽しむ。
14:00 ミーティング。開放的な空間でフレッシュなアイデアを生む。
18:00 砂浜へ行き、思いっきり遊ぶ
19:00 ディナー。仕事などの話をしながらグルメを堪能。
やはり開放的な空間やいつもと違った環境はクリエイティブな発想を生むようです。
また、空港や繁華街からアクセスがいいこともストレスフリーに仕事ができた要因だと語っています。
引用:https://workxation.mec.co.jp/cases/


また、JTBはハワイにある支社で、三菱UFJ銀行は軽井沢や和歌山県白浜町のワーケーション専用施設で、野村綜合研究所は徳島県のサテライトオフィスでそれぞれワーケーションを実施していることも知られています。
こういった企業の導入事例を見ていると、ワーケーションにも大きく分けて2種類ほどあることがわかります。
①完全に「ワーケーション」を目的としたもの。
②休暇の最中でも働くことを可能にしたもの。
前者では環境を変えて働くことに重きを置いているようです。
社員のモチベーションやクリエイティビティの向上を狙って、仕事ベースだけれど環境を変えて遊ぶ時間も作る。こういったタイプのワーケーションです。
一方後者は休暇(バケーション)に重きをおき、休暇がメインだけれど必要があればリゾート地などその宿泊先で仕事をすることもできる。
バケーション重視のワーケーションです。
どちらもそれぞれ違った良さがあると思います。
導入を検討されている企業は、どちらに重きを置くべきかなどをケースバイケースで考える必要があるでしょう。
ではワーケーションで得られるものはなにか。
メリット6つ


ワーケーションには大きなメリットが6つあり、従業員側にはもちろん、会社側にもメリットがあります。
実際に経験したことを踏まえた上で、メリットを以下のように挙げました。
一つ一つ簡潔に説明していきます。
①リラックス・ストレス軽減効果
②モチベーションの向上
③時間の有効活用
④クリエイティブ力の向上
⑤有給休暇取得の促進
⑥働き方改革に対する姿勢
①リラックス・ストレス軽減効果


コロナ禍で、自宅でずっとデスクに向かって作業しなければいけなくなったり、人と対面でコミュニケーションをとることが難しくなったため、多くの方がストレスを抱えています。
ワーケーションをすることによって、環境そのものが大きく変わるため、気分転換をすることができます。
また、自然が多いところなどに行けば、リラックス効果やストレス軽減効果も期待できるでしょう。
仕事をしながらリラックスもできるという働き方は、とても革新的ではないでしょうか。
②モチベーションの向上


タスクがルーティン化してしまっていて、尚且つ場所もいつも自宅という同じ場所で作業していると、どうしてもモチベーションの維持が大変になってきます。
社内での顔を合わせたコミュニケーションも減ってしまったため、仕事に対するモチベーションの維持は多くの人の悩みになっているのではないでしょうか。
そこで心機一転、働く場所を変えるということは、モチベーションの向上に大きな役割を果たします。
また、「完全に仕事を離れることはできないけれど、休暇取得もしたいし…」という方にとって、
ワーケーションという働き方はある種、救世主のような存在かもしれません。
会社にとっても、社員のモチベーションが上がることは会社への貢献につながりますし、
離職率の低下も見込めるため、メリットだと言えます。
③時間の有効活用


長期休暇を取得する際にワーケーションをすることができれば、リゾート地での滞在時間を延ばすことも可能です。
例えば、2週間とあるリゾート地で休暇を取るとしましょう。
勤めている会社にワーケーションの制度が整っていて、5日間業務に取り組むとします。
単純計算で2週間+5日間リゾート地に滞在することができるため、滞在時間を延ばすことができ、時間を有効活用することができます。
また、作業効率そのものが上がる可能性が非常に高いのがワーケーションです。
もちろん、リゾート地などで業務に取り組む際は、オンとオフの切り替えをはっきりと行わなければいけませんが、自分で好きな時に仕事をするスタイルならば作業効率は上がっていくでしょう。
そういった面でも、時間は有効活用することができると言えます。
④クリエイティブ力の向上


クリエイティビティが求められる役職についている方にとって、ワーケーションは夢のような環境ではないでしょうか。
やはり環境がガラッと変わると、刺激になるもの、インスピレーションの量と質が大きく上がります。
リゾート地や、いつもとは全く違う場所で思考することにより、より柔軟な発想をすることができ、新たなアイデアが湧いてくるはずです。
⑤有給休暇取得の促進


有給休暇が義務付けられている今日ですが、やはりまとまった長期休暇などを社員が取ることは、その人が担当しているタスクが一時的にストップするため、リスキーでした。
しかしワーケーション制度の導入によって、会社にとっても従業員にとっても、有給休暇を取得してくれやすい/しやすい環境に変わりました。
大きく穴が開いてしまわないように、休暇中でもあっても数日業務に取り組む日を設けることができます。
会社にとっても従業員にとってもメリットだと言えるでしょう。
⑥働き方改革に対する姿勢


そして最後は、働き方改革に対する姿勢を世間にアピールできることです。
世間と言っても、国民全員などといった大きなものではなく、「入社を検討している優秀な人材などに対して」という点がメインになってくるでしょう。
このような、将来の会社に影響してくるような点でもメリットはあるのです。
デメリット4つ


もちろん、メリットがあればデメリットもあります。
従業員にとってのデメリットも少しはありますが、主に会社にとってのデメリット、言い換えると「コスト」となる面が出てきます。
それには以下のようなものが挙げられます。
こちらも、一つ一つ簡潔に説明していきます。
①導入する際のコスト
②機密情報漏洩のリスク
③就業時間の把握
④休暇と仕事の線引き
①導入する際のコスト


ワーケーション制度を導入するにあたって、少なからずコストはかかります。
zoomやGoogle Meetなどのオンラインミーティングツールをはじめ、インターネットを使える環境にするためのコストなどがあります。
新型コロナウイルスの影響で政府からリモートワークを推奨されていますが、こういったコストや効率を考えた上で踏み切れずにいる会社がいるのも現状です。
そういった企業にとっては、ワーケーションを導入する以前に、リモートワークを導入する必要があるため、大きな決断となるでしょう。
つまり、ワーケーションを導入するにはまずリモートワークの導入が必要とされる場合があるということです。
いまだに課題を抱えている働き方改革をどうにか解決しよう、と先頭をいく県があります。
それが、和歌山県です。
和歌山県は平成29年(2017年)より、日本でいち早くワーケーションを推進するプロジェクトを行ってきました。
特に白浜町では街中にWi-Fiが通っていて、砂浜でオンライン会議をすることもできるのだそうです。
インターネットが使える環境を一定の地域全体で整えるという取り組みはとても革新的ではないでしょうか。
こういった取り組みが増えることで、今はリモートワーク やワーケーションの導入に踏み切れない企業が大きく前進することができるかもしれません。
②機密情報漏洩のリスク


家やオフィスでの仕事と違い、外出先で仕事をするとなると、気をつけなければいけないのが会社や事業に関する情報漏洩のリスクです。
個人情報を扱っている業種ならもちろん、そうでない場合にも会社の機密情報や、その情報が入った端末などをどう扱うのか、注意が必要となります。
こちらに関しては、個人で気をつけるだけではなく、何らかの対策などが必要になるかもしれません。
③就業時間の把握


オフィスではない場所で仕事をする場合全てに当てはまることですが、就業時間をしっかりと把握することが難しいのがこのリモートワークの課題です。
ワーケーションのみならず、自宅でのリモートワークでも同じことが言えるでしょう。
テレワーク用の勤怠管理システムを導入したり、細かい連絡を義務付けるなど方法はありますが、オフィスにいるときより把握が難しくなることは間違いありません。
そのため、こちらの点についてもデメリットになると念頭に入れておく必要があります。
④休暇と仕事の線引き


これまでの3つは会社にとってのデメリットですが、従業員にとっても課題があります。
それが、休暇と仕事の線引きです。
リゾート地などで業務に取り組むのは、気分転換をすることができる反面、切り替えが難しいというのも事実です。
オフィスや自宅のデスクなどは「仕事に取り組む場所」と脳も認識しているため、集中しやすいです。
しかしリゾート地など普段仕事をしていない場所だと、周りの環境に集中を持ってかれてしまうこともあります。
普段からノマドワーカーのように点々と場所を変えて仕事に取り組んでいる方はさほど難しくないかもしれませんが、人によってはこの切り替えが課題になってくるでしょう。
どんな人(会社)におすすめ?


これまでメリット・デメリットを一つずつ紹介してきました。
ではどんな人(会社)に適しているのでしょうか。
まず、どういった人に勧められるか。
1. フリーランスのクリエイター・エンジニア
間違いなくフリーランスの方には勧められる働き方でしょう。
そもそもフリーランスの方の働き方はワーケーションに近いものがありますので、導入もしやすいのではないかと思います。
2. IT企業のクリエイター・エンジニア・マーケター
IT企業であればこの3つの職業は基本、パソコン1台あればどこでも仕事することができます。
逆に営業などを職業とする人は、いろいろな場所へ先方の予定に合わせて赴かなければいけないため、ワーケーションを実施することは難しいと言えるでしょう。
また、クリエイターといっても多くの職種があります。
デザイナーやライターなど、ほとんどの方はパソコン1台で仕事ができ、尚且つクリエイティビティが求められるのでワーケーションに向いていると言えます。


では次は、どんな会社に勧められるか。
ずばりこれはIT企業です。
先ほど挙げたように、IT企業の多くの役職はパソコン1台で仕事ができます。
会議もオンラインで行えばいいですし、わざわざ赴かなければいけない場所もありません。
基本的にはパソコンとのにらめっこなのでワーケーションをしてリラックス・気分転換をしつつ、業務に打ち込むことができます。
IT企業の管理職の方々、これを機にワーケーションという新しい働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
本記事では「ワーケーション」という新しい働き方の基本的な情報から、企業の具体例を踏まえたメリット・デメリットなどを紹介してきました。
現在はヤフーやGoogleもリモートワークを推奨しています。
このような大企業を皮切りに、ワーケーションという働き方が、より多くの人の選択肢になる日が近いかもしれません。